「クラッシュ」を見てみました。おもしろかったです。ひとつの交通事故を起点に、
アメリカで暮らす様々な人々を取り巻く差別や偏見、憎悪などを描いています。
・「憎悪は、雪だるまのように大きくなって連鎖していく。そのことを描いた映画だ」
と、なにかで紹介されていたんですね。思い出したので、レンタルしてきました。
・登場人物が多いです。調べてみたら、こういうのを群像劇っていうんですね。
「主人公と、それを取り巻く人々という見方で脇役を描くスタイルではなく、
登場人物一人一人にスポットを当て集団が巻き起こすドラマを描く」とのこと。
映画の脚本がすごくいいです。バラバラの話が、最後きちんとまとまっていきます。
・いろんな国の人が出てきて、ちょっとしたことでトラブルやケンカになります。
屈辱的な扱いをされた人が、怒りをまた別の人にぶつけ、連鎖していきます。
・そんな対応しなければ、スムーズにいくのになあ、という場面が多いです。
たとえば、医療を取り次いでくれる黒人の女性を罵倒しなければ、
いい病院を紹介してもらえたかもしれないのになあ、とか。
アドバイスに従ってドアを変えれば、泥棒に入られなかったかもしれないし
もし入られていたとしても、保険金も支払われただろうになあ、とか。
・じゃあエリートはずっとエリート、悪人は100%悪人かと言ったらそうではなくて、
不良の弟がいたり、家に帰れば親の介護をする息子だったりするわけです。
やりばのないイライラを、人種を差別することで解消しようとするんですよね。
・登場人物たちが、いい面でも悪い面でも出会い、そのたびぶつかり合います。
黒人が大嫌いな警官に、屈辱的な取り調べをされた女性が、車の事故をします。
助けに来たのは、その屈辱的な取り調べをした警官。
女性は嫌でたまらなくて拒絶するけど、結局その警官に救い出されます。
・よくも悪くもループするんですよね。連鎖というか。
じゃあいいことやったら、いい結果になるかというと、そうでもない。
・父親は黒人に好意的で、自分の会社で何人も黒人を雇っていたけど、
その息子は黒人が大嫌い、とかね。いいことが連鎖しないわけです。
・空砲とはいえ、拳銃で撃たれたわけだから、警察に通報してもいいわけだけど
逃がしてやります。これは、向けられた憎悪を断ち切ってるわけです。連鎖しない。
・黒人嫌いの相棒に嫌気がさした警官は、ひとりでパトカーに乗るようになります。
屈辱的な取り調べをされた女性の夫を逃がしたり、ヒッチハイクの黒人を
自分の車に乗せたりするけど、結局は黒人を射殺してしまう。
これも、いいことをしようとしているのに、いい方向につながらなかった。
・悪意を受け取っても、消化して次へどう渡すかは、その人次第でもあるんですよね。
この映画の最後、タイ人・カンボジア人・中国人を車から降ろします。
これは悪循環なんだろうか、好循環なんだろうか。好循環だ、と私は思います。
・この映画は人種差別だからわかりやすいけど、こういうのは日本でもありますね。
肌の色が同じ同士で差別しあっているから、少しだけわかりにくいですが。
露骨にやる人は減ってきたのかな。表面上は取り繕って、陰でコソコソって感じ。
あんまり、隠せてないですけどね。遅かれ早かれ、本人の耳には入るものです。
・それと、「自分はそれをしてもいい立場にいるんだ」と思ってる人が
とても多いのかもしれないですね。たぶん無意識です。自覚はない。
本人にとっては当然のことだから、悪いとも思っていない。私も気をつけないと。
「クラッシュ」を見てみました。おもしろかったです。
いろいろな国の人が出てくる群像劇です。見ることができて、よかったです。